第4回(2020年)

アグリカルチャーコンペティション第4回(2020年)

 2020年11月29日(日)にアグリカルチャーコンペティション第4回(2020) (以下アグコン) が、新型コロナウイルス感染症COVID-19)の感染防止のため、ビデオ会議システム「Zoom」を用いた遠隔方式で開催されました。

共同宣言

「食と農、私たちにできること、私たちからの提案」

農林水産省の発表によると、日本のカロリーベースの食料自給率(2019年度)は38%で、長期的には低下傾向にあります。世界に目を向けると、「自国第一主義」が台頭し、世界人口増加と天災等により食料の入手競争が一層厳しくなりつつあります。また、世界では多くの人々が飢餓に直面している現状があります。こうした現状を踏まえて、私たちアグリカルチャーコンペティションに参加した学生は、私たちにできること、社会への提案に分け、食料問題と農業問題に関して、共同宣言を行います。

【私たちにできること】

私たちは、自分自身でできる日々の身近なことから、食と農に対する行動を始めます。

1.私たちは、アグリカルチャーコンペティションを通じて、日本が抱えている食料問題や農業問題(以下食料問題等)について学ぶ機会を得ました。しかし、多くの人が、厳しい食料問題等に対して、現状を理解せず、あるいは目を背けているのではないでしょうか。これら問題を解決していくためには、今回、私たちが学んだことを広く社会に伝え、理解してもらう必要があると考えます。私たちは、家族、友人、先輩、後輩等に、食料や農業に関する正しい情報を伝えたり、SNS等で情報発信を行ったりすることで、多くの人たちに問題意識をもってもらえるように努めます。

2.消費者庁によると、日本では、年間2,550万トンもの食品廃棄物等が出され、このうち食べられるにも関わらず廃棄される食品ロスも612万トン(2017年度推計)にも達しています。一方で世界では11人に1人がいまだに十分な食料を食べることができない現実がありますが、日本の食品廃棄物量は、世界の食料援助量を上回っているのです。一見、食品ロスと食料問題は、別問題のように感じますが、「世界の食料は有限であり、無駄にしてはならない」という点から共通点があると考えます。しかし、私たち学生が、国連WFP(World Food Programme)と同じように直接的な支援で貢献することは困難です。そこで、私たちは、世界中に食料が公平に分配されることを願い、また食料の生産者に感謝を示すために、毎日の生活の中で、食品ロス削減に努めます。

3.私たちは、日本の農畜産物の安全、安心、新鮮、美味しいという価値を評価しなくてはなりません。日本の農業を守るために私たちができる行動は、海外産の農産物を購入するのではなく、安心・安全な国産の農産物を評価し購入する事です。私たちは、日本の農業を成長させるという視点を持ち、日本の農畜産物に適正な対価を支払います。

【社会への提案】

カロリーベースの食料自給率の低下に対して、新規就農者増加、農業経営の近代化により、農業生産高の大幅向上を図ることが不可欠です。既に様々な施策が講じられていますが、十分な成果が得られていない現状を鑑み、4つの提案を致します。

1.「アグリテック」「スマート農業」が叫ばれていますが、農業のICT(Information & Communication Technology)化が進んでいません。この結果、若者の農業に対するイメージの低下を招いています。海外ではドローンやビッグデータを用いた先進的な取り組みが成果をあげていますが、日本では、ICT農業が緒に就いたばかりで、世界各国から遅れをとっています。ICT農業は、収量増加や品質向上のみならず、農業で大きな課題である人手不足の解消にもつながります。私たちは、当面は投資経済性を無視しても、公的資金も投入し、農業のICT化を急速に普及させるべきと考えます。

2.私たちは、農業経営の主体を個人である農家から法人に大胆に転換し、新規就農の多様化進めるべきと考えます。農家の子弟ではない者が新規就農しようとすると、天候リスク、自然災害リスク、害虫リスク、そして多額の借入金と、個人として負わねばならないリスクが多過ぎます。法人の多角化、多地域化を進め、経営を安定化させた上で、給与所得者として雇用することにより個人のリスクを最小化して、若者の新規就農を可能にすべきです。

3.現状の延長線で、私たち若者の新規就農者を増加させることは難しいと考えます。若者の農業に対する理解、興味、関心が不足しており、大学生の職業の選択肢に農業はなかなか含まれません。小学生、中学生の時は農業に触れる機会が多かったにも関わらず、歳を重ねるごとに「食」に触れる機会が減少していきます。その結果、現在、農業の現場に日本人の若者が少なく、農業従事者の平均年齢は68歳(2019年度)に達しています。従来の「農作物生産の手伝いをする」という食農教育、食育教育(以下食農教育等)に留まらず、大学生が農業のマーケティング活動や生産の改善活動を担い、農業の付加価値を創造するような新しい食農教育等が必要であると考えます。私たちは、行政、農業に関する関連団体に対して、欠落している大学生に対する食農教育等の機会を増やし、そして提案型の食農教育等に取り組むことを提案します。

4.食料問題等に関心を持つ大学生は少なくありません。しかし、学んだこと、そして考えたことを提案する機会が少ないため、主体的に食料問題等を解決していこうとする意欲の向上に結び付いていません。私たちは、大学生の斬新な発想力と提案力が将来の日本、世界の食料問題等を変えることができると信じています。そのために、私たちも努力することを誓うと共に、行政、農業に関する関連団体、大学等に対して、大学生が食料問題等に関する提案を行う機会を増加させて頂くことをお願いしたいと思います。

受賞チーム一覧

アグリカルチャーコンペティション第4回(2020)が11月29日(日)に開催され、下記の受賞チームが決定しました。

学術的研究分野
最優秀賞 龍谷大学経営学部 藤岡章子ゼミナール ぶどう山椒を、救い隊 「ぶどう山椒産地の構図と活性化戦略-有田地域における交流人口創出事業を手がかりとして-」

優秀賞 明治大学 中嶋晋作ゼミナール(食ビジネス論研究室)食美人 「Tweetから見る東伊豆町の可能性」

実践的研究分野
最優秀賞 関西大学経済学部 佐々木保幸ゼミナール GELATO-VEGE 「なにわの伝統野菜×ジェラート from天下の台所」

優秀賞 日本大学経済学部 新海宏美ゼミナール 新海ゼミ2班 「農福連携について」

審査員特別賞
・中央大学経済学部 江川章ゼミナール Team アグリ 「JAを介した契約取引の推進-JA富里市・秩父市を事例に-」
・関西大学経済学部 佐々木保幸ゼミナール Aチーム UDF 「ユニバーサルデザインフード」
・日本大学生物資源科学部 川手督也ゼミナール(産業社会学研究室)湯河原みかんプロジェクト 「神奈川県湯河原町にお    
 けるみかんを核にした地域活性化の現状と課題」
・創価女子短期大学国際ビジネス学科 水元昇ゼミナール Passionista 「Passion Power ~八王子パッションフルーツのパ         
 ワフルな魅力を届けよう~」
・横浜市立大学国際総合科学部 柴田典子ゼミナール おさかな広め隊 「大学生の食生活を通じた魚食の消費拡大」
・日本大学商学部 秋川卓也ゼミナール 秋川ゼミナールDチーム 「農業問題における道の駅の活用法」

ブロック優勝
・関西大学 佐々木保幸 マーケティング パル 「コロナ禍におけるフードバンク」
・日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 佐藤奨平 食品企業組織論研究室 茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントA 「お菓子流星群motegi-茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントA-」
・日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 佐藤奨平 食品企業組織論研究室 茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントB  「すべらないお菓子で地方創生⁉︎~茂木町「輪菓子」プロジェクト~-茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントB-」

学生投票最多得票賞
・龍谷大学経営学部 藤岡章子 藤岡ゼミ ぶどう山椒を、救い隊 「ぶどう山椒産地の構図と活性化戦略-有田地域における交 
 流人口創出事業を手がかりとして-」
・関西大学・経済学部 佐々木保幸 佐々木ゼミナール GELATO-VEGE 「なにわの伝統野菜×ジェラート from天下の台
 所」

参加チーム

G001 愛知淑徳大学 ビジネス学部 大塚ゼミナール おむすび 実践的研究分野 エゴマ油の搾りかす再利用による地域活性化の実践ー下呂市飛騨小坂を拠点として
G002 日本大学商学部 川野ゼミナール となりのポテト 学術的研究分野 農業への注力度からのJA経営分析
G003 日本大学商学部 秋川ゼミナール 土産ロス班 実践的研究分野 土産菓子における食品ロス~食べ物を無駄にしない社会を目指して~
G004 日本大学商学部 秋川ゼミナール 秋川ゼミナールDチーム 実践的研究分野 農業問題における道の駅の活用法
G005 関西大学 経済学部 佐々木ゼミ Aチーム UDF 学術的研究分野 ユニバーサルデザインフード
G006 大阪成蹊大学・経営学部 フードコミュニケーション研究室 伴ゼミナール 学術的研究分野 オーガニック食品市場の販売促進のための提言 ~有機野菜の現状と課題を中心として~
G007 大阪成蹊大学・経営学部 フードシステム研究室 なにわもんK&T 実践的研究分野 大阪産(もん)を使った商品開発と、なにわ伝統野菜の啓発イベント ~大阪・なにわの食材を次世代に繋ぐバトン~
G008 明治大学政治経済学部 奥山ゼミナール パンプキン 実践的研究分野 農業の高付加価値と観光の再生が求められる地域においてその二つが相互に連携し持続的なまちづくりを実現させるための研究
G009 関西大学・経済学部 佐々木ゼミナール GELATO-VEGE 実践的研究分野 なにわの伝統野菜×ジェラート from天下の台所
G010 専修大学商学部 石川ゼミナール チーム西田 学術的研究分野 農業女子の普及
G012 神奈川大学 工学部 経営工学科 経営システム工学研究室 Kチーム 実践的研究分野 農業を,”モノ”から”コト”に 〜Agri Powerから始まるあなたの農業ライフ〜
G013 関西大学経済学部 産業・企業専修 ほさちーず 学術的研究分野 大学生活協同組合
G014 関西大学 マーケティング パル 学術的研究分野 コロナ禍におけるフードバンク
G015 釧路公立大学経済学科 松野ゼミ 釧路たんちょうチーム 学術的研究分野 24時間ライブ農業
G016 明治大学 食ビジネス論研究室 食美人 学術的研究分野 Tweetから見る東伊豆町の可能性
G017 専修大学・商学部 石川ゼミナール 専修大学・鈴木チーム 学術的研究分野 ジビエと狩猟に学ぶ命の大切さ〜「いただきます」の意味を再確認〜
G018 北星学園大学・経済学部 野原ゼミナール 野原ゼミナール 実践的研究分野 一次産業保護のためのナッジ理論を応用した、環境配慮型行動の促進
G019 横浜市立大学・国際総合科学部 柴田ゼミ おさかな広め隊 実践的研究分野 大学生の食生活を通じた魚食の消費拡大
G020 日本大学商学部 村井ゼミナール Bチーム 学術的研究分野 食品ロスに対する意識向上を目指して ~ドギーバッグを広めよう~
G021 専修大学商学部 渡辺達朗ゼミナール 産地応援チーム 実践的研究分野 農業女子×学生の目線~農業の現状と活性化~
G022 龍谷大学経営学部 藤岡ゼミ ぶどう山椒を、救い隊 ぶどう山椒産地の構図と活性化戦略-有田地域における交流人口創出事業を手がかりとして-
G023 横浜市立大学 国際商学部 藤崎ゼミナール ふじさきファーム(株) 実践的研究分野 都市圏内のコメ生産体験型施設の提案
G024 日本大学 経済学部 新海ゼミ 新海ゼミ1班 実践的研究分野 昆虫の可能性
G025 中央大学 経済学部 江川章ゼミ 多摩ノウギョウ倶楽部 学術的研究分野 農業×アスリート:アスリートのデュアルキャリアの活用
G026 日本大学経済学部 フードシステム論 新海ゼミ2班 実践的研究分野 農福連携について
G027 日本大学生物資源科学部 産業社会学研究室 湯河原みかんプロジェクト 学術的研究分野 神奈川県湯河原町におけるみかんを核にした地域活性化の現状と課題
G028 釧路公立大学 経済学部 松野ゼミ チーマ馬渡 学術的研究分野 北海道における農業国家戦略特区の提案
G029 日本大学・生物資源科学部 産業社会学研究室(川手督也ゼミ) 建長汁プロジェクト 学術的研究分野 建長寺由来の建長汁の食文化論的考察とアレンジレシピの開発
G030 中央大学 江川ゼミ Team あぐり 学術的研究分野 JAを介した契約取引の推進-JA富里市・秩父市を事例に-
G031 日本大学商学部 黒澤壮史ゼミ SHOKUNOMUDA 学術的研究分野 消費者意識における食品ロスの発生要因 ~なぜ人はいらないものを買ってしまうのか~
G032 創価女子短期大学 国際ビジネス学科 水元ゼミナール Passionista 実践的研究分野 Passion Power ~八王子パッションフルーツのパワフルな魅力を届けよう~
G033 大阪成蹊大学経営学部 フードシステム研究室 食ビジF&S 実践的研究分野 能勢ぐり・泉だこの商品開発および販売促進 ~大阪産(もん)の知名度向上と大阪の農業・漁業の活性化を狙う~
G034 日本大学商学部 川野ゼミナール 川野ゼミナール2年Bチーム 実践的研究分野 農業簿記の普及
G035 日本大学・商学部 木下ゼミナール オセロ 実践的研究分野 ag“RE”culture ~ソーシャルビジネス×学生が作る世田谷農業の未来~
G036 明治大学・農学部 農業政策論研究室 チーム橋口 実践的研究分野 コラボ商品による地方創生への貢献
G037 日本大学 商学部 木下ゼミナール きのこ帝国 学術的研究分野 自治会活動の分析から読み解く地域コミュニティの現代的意義~災害時の自治会対応に関する事例研究から~
G038 関東学院大学・経営学部 福田ゼミナール リユースランド 実践的研究分野 地方都市の耕作放棄地活用~マーケティング視点によるアプローチ~
G040 明治大学・農学部 農業政策論ゼミ team生田農工大 実践的研究分野 「農tuber」が変える農業の未来
G041 日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 食品企業組織論研究室 多古町おにぎりプロジェクト・マネジメントA 実践的研究分野 多古町おにぎりプロジェクト ・マネジメント A -「 うまいもんコミュニケーション 」を通じて-
G042 日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 食品企業組織論研究室 茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントB 実践的研究分野 すべらないお菓子で地方創生!?~茂木町「輪菓子」プロジェクト~-茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントB-
G043 日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 食品企業組織論研究室 茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントA 実践的研究分野  お菓子流星群motegi-茂木町和菓子プロジェクト・マネジメントA-
G044 日本大学商学部 村井ゼミナール 村井ゼミ2年アグコンチーム 学術的研究分野 フードデリバリーの現状・課題
G045 中央大学 経済学部 江川ゼミ 豚とん(とんとん) 学術的研究分野 食品ロスの再生利用~エコフィードを事例に~
G046 日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科 食品企業組織論研究室 多古町おにぎりプロジェクト・マネジメントB 実践的研究分野 多古町おにぎりプロジェクト ・マネジメント B- 地元食材の魅力再発見!-